日誌

読書のススメ①~臨時休校だからこそ本とじっくりと向き合うのもいいですよね!~

 学習に関するデジタルコンテンツやデータベースの紹介が続きましたので、思考回線にっこりをデジタルからアナログに換えて・・・

 湯本小ビブリオ館(本日より期間限定ではじめてみました・・・)より、今回は卒業を間近に控えた6年生やおうちの方々にオススメしたい一冊をご紹介します。

 『海の見える丘』(絵本版) 作:くすのき しげのり 絵:古山 拓 発行元:星の環会

 本日3月11日で、東日本大震災から9年が経過します。

 新聞に掲載された 内堀 雅雄 福島県知事の『2020年3月11日のメッセージ』には、「希望に満ちた魅力ある豊かな福島の未来」を切り拓いていこうとする「復興・創生」への力強い意思が込められているのがわかります。その中で内堀知事は、確実な復興への途行を振り返りながら、“取り戻したもの”、“取り戻しつつあるもの”、“未だ残されているもの”、“薄れゆくもの”について語っていらっしゃいます。特に印象深く感じられるのが、「根深く残る風評」がある一方で、「薄れゆく関心」となっているのも事実であるという内容。

 「震災から10年目、『令和』という新しい時代」だからこそ、もう一度震災について様々な視点から真剣に考えてみる必要があるのではないか。そのような気持ちで内堀知事の『メッセージ』を拝読させていただき、14時46分を迎えました。

 この『海の見える丘』では、物事を「俯瞰」することについて、時に「俯瞰」することの大切さを感動的に、読者に伝えてくれます。

 人生という名の旅の終着駅と決めた町で、「キャプテン」と呼ばれるひとりの画家は、町の誰に対しても「おだやかな笑顔」でやさしく「親切」に接します。

 けがをしたおばあさんのかわりに、年老いた犬の散歩を笑顔で引き受ける「キャプテン」・・・

 けんかをする夫婦のそれぞれの言い分に、ふたりが納得するまで真剣に耳を傾ける「キャプテン」・・・

 子どもたちにせがまれれば、子どもたちが満足するまですてきなお話を聞かせてくれる「キャプテン」・・・

 身寄りのない病気になってしまった人を献身的に看病する「キャプテン」・・・

 何度も同じことを話す老人に、何度でも初めて聞くかのように接する「キャプテン」・・・

 町の人の相談にいつだって笑顔で対応する「キャプテン」・・・

 そんな「キャプテン」が唯一それらのお礼としてお願いするのが、画家として好きな色で家を塗らせてもらうこと。それだけでした。そのような生活を続け、いつしか「キャプテン」は歳を重ね、病の床につきます。そんな「キャプテン」のもとには、お世話になった町の人たちがお世話に訪れ、思い出を語り合います。そして、「キャプテン」とのお別れの日が訪れるのです。「キャプテン」は臨終の際に、最後に木を植えさえてもらった牧場主に、自分のお墓の場所をお願いします。その場所は、誰も近づかない森を越えた町外れの「丘の上」。町の人たちは、お世話になった「キャプテン」のために、みんなで「キャプテン」の柩を担いで暗い森の中を進んでいきます。そして、森をぬけ、丘の上で町の人たちが目にしたものは・・・!?

 「人は、自らの人生を俯瞰するとき、そこに何を見るのでしょうか。」

作者 くすのき しげのり さんのこの問いかけは、震災や原発の問題によって「幾多の苦難」と向き合ってきた福島にすむ私たちに、「優しさ」や「チャレンジ」することの意味、「震災から学んだこと」、そして、「日常」という「かけがえのないもの」について、改めて考えてみることを促します。9年という時間が与えてくれる「俯瞰」の視点から、それらを振り返って考えてみたとき、また違った見方や考え方が私たちの中に生まれ、もしかすると、「根深く残る風評」に立ち向かい、「薄れゆく関心」にあがない、真の「復興」へとつながる“奇跡”の力を与えてくれるような気がします。

 俯瞰の先に見えるのは、強力なエネルギー「ふくしまプライド。」なのかもしれません。

 6年生のみなさんにも、湯本小学校の6年間を、難しいですが「俯瞰」してみてほしいと思います。今まで見えなかった大切なことが見えてくるかもしれません。